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女、ひとり酒

「いらっしゃいませ。お客様、1名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「…はい」

答えたのは私。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。女ひとりで居酒屋なんて終わってる。


なにかおかしいと思ったのよ。何かあるに違いないってわかってたのに浮かれてた自分がバカみたい。就職したての私はあさってから研修で東京へ行かなきゃいけないんだけど。「もぅ会えなくなりそうだし(涙)」、そういって友達が開いてくれたお別れ会は結局あの女の作戦だったわけ。だいたい、学生だったときからしょっちゅう遊んでたわけでもないのに、嫌味なほど絵文字いっぱいのメールを送ってきて…。

「みんなでカラオケいこうよ

「みんな、この時期バタバタしてて忙しいみたい」、そう言ったあの女は飄々としてる。私のお別れ会に来てくれたのは2人だけ。もぅ2度と会いたくなかった、会わないままで暮らしていこうと心に決めていた男と、何をするわけでもないけど、なんだかんだ私と行動をともにしてきた女。ちょっと考えればわかったはずだけど、これは私にとって全然うれしい会でも何でもない。もちろんウキウキなんてしないし、別れを惜しむような気分にもならないじゃない。あの女は、私の目の前でその男と消えたのよ。盛り上がりもしないカラオケの後ひとり残されてどうでもよくなったもんだから、隣の居酒屋のカウンター席にこうやって座ってるわけ。
目的は私へのあてつけ?こんな女にもとからあてつけをされるようなことをした記憶なんてあるはずがないのに。私はあの男のことなんてすっかり好きじゃなくなってるっていうのに、そんなことも知らないで私へのあてつけを成功させたつもりの女。考えただけで悲しくなる。なんとなく頼んだサラダは全然減らずに、お酒だけがすすんだ。

そうそう、店に入ってどのくらい経った頃が覚えてないけど。この居酒屋でささやかな誕生日会が開かれてたの。聞こえてきた拍手で我に返ったら、店は少し暗くなっていて、奥のほうでなにかやっているのが見えた。「祝ってもらうはずだったんだな~、私」。余計悲しくなって飲んだことのないお酒を頼んでみたんだけど、すぐ後悔したわ。私の残りものをなんでもさらってくれてたあの男は、あの女と消えてたんだった。


こんなに飲んで、帰る方法なんて何一つ考えていない。店を出たら、あいつが私を探してるかもしれないし。…それはちょっと期待しすぎにしても、すぐにタクシーがつかまってくれてもいい気もするし、1時間以上かかったって歩いて帰る覚悟くらいある。

辛いだけでちっともうまくないお酒も、嫌味なほどイケメンで丁寧な接客の店員だって、なにもかも鼻につく。店の外は少し寒い。目の前、笹沖通りの交通量はこの時間でも減っていない。

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