完全ブログ宣言

もうひとつ先へ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

ひとし、ひとり。

こんなときに出てくるなんて思わなかったな。
AIR IN―消しゴムだ。

なんだよ。探す事を止めた時に見つかることが…って陽水かよ。
笑わせてくれるわ。

そりゃーさ、二年もの付き合いだからさ。思わんものから思い出があふれ出すこともあるさ。
でもさ、消しゴムまでやってくれるとは思いもしなかった。

たまたま買った消しゴムがおそろいで、なんか妙にこっ恥ずかしくて。
あほな論争を繰り広げたし、すぐ新しい消しゴムをおろしたっけ。
そんな青い思い出も消してくれんかな?この消しゴム。
…ってアホやな。くだらんな。今日のオレちょっとおかしいな。いつもとは違う方向でおかしいな。
ほんとおセンチ。ほんと笑わせてくれるよ。

なんでなんも言ってくれんかったんかな。
いや、こんなの自惚れ。聞いてオレになにができたん?聞いてオレはなにをしたん?
どうせ何もできないくせに。どうせなにもしないくせに。
まったく笑わせてくれるよ。

でも、オレってこんなにもろかったんだな。弱いだけでなくもろいときたか。
これからまったくあえなくなるわけじゃないのにな。でもやっぱね。
“なくして初めて気付く”ってこれ何年前の歌謡曲?
まったく笑わせてくれるわ。

イケメン店員の働く焼鳥屋→カラオケ。通称『とりから』の黄金ルートの魔法も力及ばず。オレだって奇跡を信じたよ?九分九厘ダメだってのは解ってたけど。残り一厘にかけてみたよ。


でも突きつけられたのは最悪の結末。

親友は去っていきました。
これからオレ、大学どうしよう?
まったく…。笑えねぇよ。


スポンサーサイト

PageTop

春休みのホッとひととき

「いらっしゃいませ。お客様、2名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「2人」

答えてくれたのは彼。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。
私はここにくるのが初めてで、少し緊張気味だったけど、きっと彼は私が緊張してるなんて思ってもないだろう。

「わーっ、ここ来るの初めて~。」

今思えば、ドアを開けて入って早々、キョロキョロして落ち着きなくハシャギ気味だった、気がする、、。周りの目を気にすることなく。



ここに来る前、彼はナイターでサッカーをしていて、家も近いし、誘われた私は見に行くことにした。彼と2人で会うのは初めてで、初めの一言をどう言おうか、どんな顔していこうか、いろいろと考えながら、向っていくと、あっという間にグラウンドに到着してしまった。

でもでも、着いた時はゲームの真っ最中だったので、そんな心配は必要なかったんだよね。私は邪魔にならないよう隅の方でコッソリ見ていた。彼は中学時代の友達何人かと、昔に戻ったかのようにゲームを楽しんでいた。私はその様子を微笑ましく見ていた。なんだか見てるこっちまで楽しくなる。

『いいなっ、楽しそう。こんなハシャイデル彼の姿を見るのは初めてかも。こんな表情もするんだぁ、へぇ~。』

私は心の中で思った。

おっと、終わったみたい。彼は近づいてきてタオルで汗を拭きながら、

「よっ。久しぶり。この後どこ行く?」

なんとも軽いノリですな。今まで彼とは2人でじっくり話したことがなかったから、彼からいきなりお誘いメールが来た時も、どうなるんかな~って、ちょっとこっちは不安だったんよぉ!
話は普通にできるんだろうか・・、気遣うのもャだなぁ・・、とか。
でも、彼ときたらこのノリ。なんか私とは真逆な感じ。
自分でも嫌な性格なんだけど、変に気を遣ってしまうこのスタイル。
彼のこのノリが逆に、私が勝手に作りかけていた壁を取り除いてくれたんだと思う。しゃーなぃ、感謝しとこっw



私は家から歩いて5分もかからないグラウンドに、サッカー見に行くだけだと思ってたから、もう夜だったし、手ぶらでなんとも楽~な格好で来ていた。これから居酒屋行くなんて思ってもなかったから、行こうって言われても、お金ないし・・・、すぐ「うん」って言えなかった。
だって着替えずにそのままの格好、“ジャージ”で来ようかと思ったくらいですから。とりあえずはジャージで来なくてよかった。
それを言ったら彼は、

「全然いいよ。ジャージかぁ、むしろそれはそれで良かった。w」

と、軽く私を笑わせてくれるw。なんとも上手いこと言うもんだ。
居酒屋ではいつもと違った感じの、ほんわかナチュラルハイとでも言おうか、そんな彼だった。
もっとぎこちない感じになるんかな~って思ってたんだけど、そんなことは全くなかった。これはきっと彼のお陰。

あっという間に時間は過ぎて、そろそろ帰ろうかとしたそんな時、ケーキが運ばれてきて、なにやら誰かのお誕生日みたい☆
これはメデタイ。そこにいた皆がぱっと笑顔になって、自然と拍手が沸きあがる。素敵だな~。『よっ、彼女、幸せ者♪』
さてさて、私達はそろそろ出るとしますか。男性二人も席が空くのを待ってるみたいだし。気付けば2時間も経っていた。やるなぁ~、ウチら。

居酒屋を出ると野良ネコがこっちを見て、パーって通り過ぎてしまった。

「俺動物あんま好きじゃないんよな~。でも、犬とネコだったらネコ派じゃな。」
「私は犬だな。」

勝手気ままな自由奔放なネコが好きという彼。私が思うに、これは彼の自分の意思をしっかりもった生き方に似ているんじゃないかな。私の性格は真逆な犬だね。相手に気を遣ったどっちつかずのような、従う感じ。そんなんだから犬は嫌いって言ってた。
私とは真逆な性格だと思うけど、考え方が似てるとこもあったからか、話してたら時間が過ぎるのが早くて、思いのほか楽しかった。


“とりから”の説明を何回かしてくれたけど、その場でピンとこなくて・・。あんまいい反応ができなかった。家に帰ってから、あ!!!なるほどね~!!て気付きました。遅っ!頭悪っ!

カラオケでは、彼がいつの間にか入れていたあの曲を、私が心地よ~く歌ってあげてぇ~w、そして彼は“椎名へきる”を歌ってくれました。w

そんなこんなで、楽しいひと時は過ぎていったのでした。







PageTop

オ帰リナサイマセゴ主人サマ☆

ただ今帰りました!!
みなさん元気にしてましたか??
私は超超元気になって帰ってきました(≧▽≦)
春休みにみんなに会えなかったのはめっちゃ残念・・・
けど今回の旅でPICASSOは少し大人になれたような気がします。
初めて親と長期間離れてみて、親のありがたみが初めてわかりました。
そして友達の大切さを身に染みて感じました。
50日間、連絡も取れなくて寂しかったけど、
それ以上に得るものは大きかったなって思います。

なんてね(*^_^ヾ

なんか完ブロものぞかないうちに盛り上がってるみたいで☆
春休みみんななにかビックニュースあった??
報告待ってます(^-^)

PageTop

女ゴコロ ~雨のち晴れ~

「いらっしゃいませ。お客様、1名様ですか?」


顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。


「いえ、後からもう1人・・」


ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。ここに来るのはいつ以来だっけ。


それにしてもアイツはまた遅刻か。付き合いたての頃は女の子を待たせるなんて・・とか思ってたけど、今では慣れっこになっちゃったな。
まったく。たまには私より先に来てみろっつーの。まぁいいか。


席に通されて待つこと30分。
「わりーわりー。」と、気持ちのこもっていない謝罪の言葉とともに
アイツがきた。
「また遅刻?今日はここ出してよね。」私はわざと不機嫌そうに言って様子をうかがう。
「わかったよ。出せばいいんだろ?」
なに、逆ギレ?もぉーしょうがないヤツ。
「うそうそ。冗談だってー。さっ、何頼む?」
「とりあえずビールと適当に焼き鳥。」
「うん、分かった。店員さんすいませーん。えっと、ビールとぉ・・・」
だけど何でこっちが気を遣わなきゃなんないわけ?


おかしい。ビールも焼き鳥も来た。アイツが好きなたこわさだってある。なのにアイツは何も喋ろうとしない。ましてやキョロキョロして目も合わそうとしない。もぉー何なの?さすがに私もだんだん不機嫌なってくる。そして気まずい沈黙が続いた。


そんな沈黙の中、隣で必死に“とりから”という言葉の意味を説明する男の声が聞こえる。焼き鳥屋からカラオケで“とりから”ねぇ。上手いこと言うもんだ。


どこか変なアイツをよそにこんなことを考えていた矢先、突然店内が暗くなった。そしてどこからか拍手が聞こえてくる。見ると店員さんがローソクの灯ったケーキを運んでいた。誕生日のお祝いかぁ。店内に広がっていく拍手の中、私も手をたたいて祝福した。


ちらっと横目でアイツをうかがうと、ますます都合が悪そうな顔をしている。何よ!私が何か悪いことした??今にも口に出してそう言ってやろうかと思ったその時、
「オレ、あんな風には出来ないけどコレ・・」
見ると手には小さな白い箱。
「明日は付き合ってちょうど5年の記念日だろ。だから今日必死に探してたんだよ。そうしてたら時間かかって・・遅れてほんとゴメンな。」
フタを開けると中にはシルバーのリングが入っていた。驚きと涙で、
「ううん、ありがと。嬉しい。」
そう言うのが精一杯だった。


「“とりから”する?」
アイツが急に言い出した。なんだ、やっぱ聞いてたんだ。
私は笑ってうなずいた。


アイツがいつも歌う『そばにいて』が、
今日はココロに響いた、気がスル。。

PageTop

男、ふたり鳥

「いらっしゃいませ。お客様、2名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「はい」

答えたのは俺。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。ここに来るのは何度目だろうか。


よく考えるとここに来るときはいつも4人だった。俺、俺の彼女、こいつ、こいつの彼女。でも今はこいつと2人。そう2人。時が経つのは早いな、とか考えてしまう。
「ただいまカウンターしか空いてないんですけどどうされますか?」そんな考えを遮るようにイケメン店員が聞いてくる。
「じゃあ待ちます。」
答えたのは親友Y。


それにしても繁盛しとるな。確か今日は月曜のはず。春休みに入ってからというもの曜日の感覚がまったくない。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
そう言ってトイレに駆け込むY。そういえばずっと我慢しとったっけな。1人になりふとカウンターのほうに目をやると女の人が1人で座っている。ほとんど口をつけていないサラダと酒。顔は見えないがどこか寂しそうな雰囲気を感じさせる。この人もなんかあったんじゃろうな。
「今日一日沈んで明日からは元気出せよ」
心の中で言ってみる。


そのとき急に店内が暗くなった。そしてケーキと花束をもって歩いていく先ほどのイケメン店員。居酒屋で誕生日?そしてこれは十中八九サプライズ。サプライズとしてはベタな気もするが、ここが居酒屋ということもあってかどこか新鮮だった。そして拍手をする。
「どこのだれかわからんけどおめでとう」
サプライズの誕生日会なんかしてくれる人がおるってゆうのは幸せじゃな。


明かりが点く。そこへ戻ってくるY。それにしても長いトイレじゃったな。ふと店の奥を見るとカップルらしき2人が歩いてくる。どうやら席が空いたようだ。


適当に焼き鳥と酒を注文する。テンションは低め。
「よく4人でここ来たよなぁ」
Yがつぶやく。俺はあえて何もこたえない。ほんの数ヶ月前まではこんなことになるとは思ってもみなかった。そう、この数ヶ月で事態は急変したのだ。


いろんな話をした。こいつとは高1のときからの付き合い。こんな付き合いにくい俺を1番の親友と言ってくれるレアなやつ。岡山に帰ったときは必ず会う。今回の帰省は2日の夜に帰ってきて5日の朝大阪に戻るという強行スケジュール。それでもこいつとは会う。性格とかは真逆でもこいつとは合う。


「また4人で来れたらええな」
Yは言う。
「今度は友達としてじゃけどな」


「じゃな」
身勝手にも心からそう思う。





身勝手とわかっていてもそう思う。
それほど濃かった2年7ヶ月と23日。


「ごめん」はもう言わんよ。
約束したもんな。あの噴水の前で。

でもこれだけは言わせて。

「ありがとう」

何度でも言わせて。


「本当にありがとう」












PageTop

ニアミス 

「いらっしゃいませ。お客様、2名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「うん、2人」

答えたのは俺。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。実際に入るのは初めて。


これを個室系ダイニングとは言えないんだろうけども…。通されたのはいわゆるボックス席で、隣の席とはしっかりとした“壁”で仕切られてる。他の客のたばこの煙なんかが気になることはないし、落ち着ける空間に間違いない。「それにしても月曜の夜にしては混んでいる」、そんなことを思ったけれど、ここが初めて来た店だったことを思い出す。まとまりはないけれど、大型デパートに大型電気店、レストラン、スポーツショップ、アミューズメント施設から図書館まで…、倉敷駅へとつながる笹沖通りとはなにかと揃っている通りである。混むのもしかたないか。


せっかくの帰省中、このまま帰るってのもつまんないな。これが“彼女”を誘った理由。慣れない車ではあるけど、彼女の家まで迎えにいって、そのまま俺の家と反対の方向へと車を走らせた。運転するのはいいのだけど、行く先もなしにドライブを楽しめるほど道に詳しくない俺は、倉敷駅へ行く途中にいつも横目に見ていた居酒屋に入ることにしたわけだ。
なんともさらっと誘ったようではあるけど、考えてみれば2人でゆっくり話をするのはこれが初めてだった。「大勢で遊ぶときはいつもそこにいるのだけれど…」、印象としてはお互いにそんな感じじゃないかと思う。

俺はいつも行き当たりばったり。やることがないから友達を誘って遊びにいくのは小学生のときから変わらないけれど、それがやれ、相手が女の子で、自分が車を運転して、はるばる笹沖で、しかも居酒屋である。自転車で近所の公園や校庭や海に行って遊んでた頃に比べて、漠然と大人になった気がした。車ってことでアルコールはないのだけど、テンションは高め。お互いの小さい頃の話や彼女の好きな温泉の話なんかをしていると、時間は“あっちゅうま”に過ぎていった。
グラスが汗をかかなくなった頃、俺はふいに「“とりから”する?」と言った。もちろん彼女はキョトーン。“とりから”というのは俺の名づけた男友達の仲間うちの隠語。ふいに彼女のオハコ『プラネタリウム』を聴きたくなった俺は、なぜか隠語でここのすぐ隣にあるカラオケへと誘ったのだ。もちろん“とりから”の意味は居酒屋(焼き鳥屋)からカラオケに行く流れのことを言うのだけど、彼女は俺がいくら説明してもピンときていない。まぁピンとくる必要はないのだけど、とりあえず“とりから”を了承してくれてうれしかった。俺は氷で薄まったぬるいジンジャエールを一気に飲み干した。


そしてその時、こんなことも起こった。席を立とうとした瞬間、急に店内が少し暗くなってどこからともなく拍手が聞こえたのだ。店員は俺の席の前を通り過ぎ、隣のボックス席へとローソクのささったケーキを運んでいる。どうやらそれはメニューにはないはずのバースデイケーキ、誕生日のお祝いのようだ。居酒屋のチェーン店で、こんなお洒落なサービスがあるのかと驚いたけれど、上機嫌も作用してなんともこっちまでハッピーな気持ちになった。かつて焼肉屋で知らない人のプチ結婚式に遭遇したことがあったけれども、そのときに「これもなにかの運命か」と思って自分もつられるように拍手をしたのを思い出した。そして今、俺の前で彼女も拍手をしていた。



大人になった自分、小さい頃の話、誰にもめぐってくる誕生日…。なにか時の流れを感じて感傷的な気分のときに聴く『プラネタリウム』は何とも言えずよかった。「みんなでいるときとは雰囲気が違う」と言われるほど、ナチュラルハイとでもいうような不思議な気分のまま、岡山最後の夜は過ぎてった。

PageTop

男、ひとり花見

「いらっしゃいませ。なんで一人なんですか?」

そんな桜の声が聞こえてきそうだった。

「・・・いいだろ、別に」

斜め下を向き僕は答えた。

ここは近所にある城跡地の公園。この時期になると満開の桜を目当てに大勢の花見客が押し寄せる。そんなところへ男一人で行くなんて変質者と思われかねない。

「友達いないんですか?」

一言多いぞ、桜のクセに。

「いないわけじゃないさ。ただ、俺は自虐が好きなんだよ」

幸せそうな家族やカップルや、どこかのサークルのグループの楽しそうな声を肌に感じながら一人で散歩する。僕に足りないのは圧倒的な孤独感で、渇望なんだ。誰もいないところより、楽しそうな人達の中で一人を感じた方がよっぽど孤独になれる。

満たされたくなかった。平々凡々な満足感を、緩やかな幸せを、受け入れたくなかった。凡人に、なりたくなかった。けれど、気がつくと僕は日常の中に埋没していて、いつか感じていたような渇きも、視野の狭さからくる強烈な感情も消えてしまっていた。

これが、大人になるってことなのかなぁ。

そんなことを思いながら、僕は歩いていた。悪くないよ。悪くないさ。きっと、スーツ姿で花見の場所取りをしているサラリーマンだってそう思ってる。仲の良さそうな老夫婦も穏やかな晩年を過ごしているんだろう。小さな子供がはしゃいでいるのを愛しそうに見つめる若い夫婦だって、きっと悪くないって思ってる。皆、そういう小さな幸せを得る為にコツコツ頑張って生きてるんだ。



「なあ、なんでお前はそんな所で花を咲かせているんだ?」

僕は花見客が寄り付かない場所で一本だけポツンと立っている桜に尋ねた。

「それは、なんで生きているのかという質問と同じですね」

桜は苦笑しながら答える。ああ、そうだなと僕も苦笑した。

「じゃあ、質問を変えるよ。孤独かい?」

僕の質問に桜は花を散らす。

「寂しくないといえば嘘になりますけど、孤独じゃないですよ」

「何故?」

「地面の下では皆と繋がってますから」
 
桜の一言に僕は少し考え、なるほど、と思った。


遠くの方からハッピーバースデーの合唱が聞こえてきた。きっと誰もが根っこでは繋がっていて、その繋がりからまた新しい木が生えて、新しい繋がりが出来るんだ。

物分りのいい大人になんてなりたくねーな。

そう思いながら僕は公園を後にした。

PageTop

女、ひとり酒

「いらっしゃいませ。お客様、1名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「…はい」

答えたのは私。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。女ひとりで居酒屋なんて終わってる。


なにかおかしいと思ったのよ。何かあるに違いないってわかってたのに浮かれてた自分がバカみたい。就職したての私はあさってから研修で東京へ行かなきゃいけないんだけど。「もぅ会えなくなりそうだし(涙)」、そういって友達が開いてくれたお別れ会は結局あの女の作戦だったわけ。だいたい、学生だったときからしょっちゅう遊んでたわけでもないのに、嫌味なほど絵文字いっぱいのメールを送ってきて…。

「みんなでカラオケいこうよ

「みんな、この時期バタバタしてて忙しいみたい」、そう言ったあの女は飄々としてる。私のお別れ会に来てくれたのは2人だけ。もぅ2度と会いたくなかった、会わないままで暮らしていこうと心に決めていた男と、何をするわけでもないけど、なんだかんだ私と行動をともにしてきた女。ちょっと考えればわかったはずだけど、これは私にとって全然うれしい会でも何でもない。もちろんウキウキなんてしないし、別れを惜しむような気分にもならないじゃない。あの女は、私の目の前でその男と消えたのよ。盛り上がりもしないカラオケの後ひとり残されてどうでもよくなったもんだから、隣の居酒屋のカウンター席にこうやって座ってるわけ。
目的は私へのあてつけ?こんな女にもとからあてつけをされるようなことをした記憶なんてあるはずがないのに。私はあの男のことなんてすっかり好きじゃなくなってるっていうのに、そんなことも知らないで私へのあてつけを成功させたつもりの女。考えただけで悲しくなる。なんとなく頼んだサラダは全然減らずに、お酒だけがすすんだ。

そうそう、店に入ってどのくらい経った頃が覚えてないけど。この居酒屋でささやかな誕生日会が開かれてたの。聞こえてきた拍手で我に返ったら、店は少し暗くなっていて、奥のほうでなにかやっているのが見えた。「祝ってもらうはずだったんだな~、私」。余計悲しくなって飲んだことのないお酒を頼んでみたんだけど、すぐ後悔したわ。私の残りものをなんでもさらってくれてたあの男は、あの女と消えてたんだった。


こんなに飲んで、帰る方法なんて何一つ考えていない。店を出たら、あいつが私を探してるかもしれないし。…それはちょっと期待しすぎにしても、すぐにタクシーがつかまってくれてもいい気もするし、1時間以上かかったって歩いて帰る覚悟くらいある。

辛いだけでちっともうまくないお酒も、嫌味なほどイケメンで丁寧な接客の店員だって、なにもかも鼻につく。店の外は少し寒い。目の前、笹沖通りの交通量はこの時間でも減っていない。

PageTop

ソノ後イチエ

「いらっしゃいませ。お客様、2名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「はい」

答えたのは僕。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。焼き鳥がうまい。


僕と“彼女”はボックス席に案内された。そしておしぼりを受けとり飲み物を注文する。車の運転がある僕はウーロン茶。“彼女”はもちろんお酒。「一度も止められたことないんだよ?」が自慢(?)の彼女だが、いくら外見を飾ったところでとてもお酒が飲める年齢には見えない。そもそも童顔なのだ。いや、それはむしろ長所なのだけれど。

「誕生日おめでとう」と乾杯。今日は4月3日。2日後の4月5日は記念すべき“彼女”の17回目の誕生日なのだ。

僕は手ぶらだった。財布に携帯、タバコ、それから車のキー。もちろんプレゼントなど“持って来ていない”。だって別に僕と“彼女”はつき合っているわけではないのだし、僕にその義務はない。ただ、会計はもちろん僕が払うつもりだ。それぐらい友達としても、年上としても当然だと思うし。


焼き鳥を数本、それからイケメン店員オススメのエビマヨサラダを食べた。“彼女”はその間、2杯ほどおかわりし、僕も「雰囲気だけでも…」と、ノンアルコールカクテルなるものをいただいた。
僕と“彼女”はお互い1年間にあった出来事を話したりした。“彼女”は学校にはあまり行かず、相変わらず夜のバイトで生計を立てていること。僕はなんとか大学には通っていて、最近髪を伸ばしていること。“彼女”が「髪長い方が似合うと思うよー」なんて言うもんで、これで僕はこの先当分短い髪にはできなくなってしまった。一方“彼女”の方も、1年前と比べるとかなり髪が伸びた。もちろんエクステは付けているらしいが、それでもやはり服装も含めて随分と大人っぽくなった印象だ(童顔だけど)。

入店してから40分ぐらい経った頃だろうか。店内の明りが突如として消えた。
たじろぐ“彼女”、と僕。

そしてケーキは運ばれて来た。ローソクの明りを灯して。

持ってきたのはもちろん先ほどからのイケメン店員、、、と言うか王本干人(おおもとほすと)君。僕の友人だ。

“彼女”は驚きの声を上げるとともにすぐに喜びの表情を浮かべた。笑うとさらに幼く見える。
そして王本君が僕に小さな花束を手渡し、僕はそれを“彼女”に渡す。

「誕生日おめでとう」と。

店員さんみんなが「おめでとうございます」と拍手をくれた。それに答えるように“彼女”がローソクの火に息を吹きかける。


大成功、だった。


昼間、鷹ちゃんとケーキ屋やら花屋を回り、“彼女”を迎えに行く前に居酒屋に寄って王本君に作戦を説明。その後、何食わぬ顔で“彼女”を連れた僕が来店する。もちろん王本君はあくまで店員として僕に接する。高い演技力を要求するドッキリだったが、王本君はじめ居酒屋の従業員みんながアカデミー賞クラスの演技をしてくれた。ありがとう、本当に。


その後の“彼女”はなんだか落ち着かない様子で、それでいてとても嬉しそうな笑顔を何度も浮かべるのだった。あまり素直に感情を表現できるタイプの子ではないのだけれど、僕が用意した思わぬサプライズに喜んでくれていることは確かなようだ。


“焼き鳥を食べた後はカラオケへ”。この極々自然な流れを“とりから”と略した友人が誰だったかは思い出せないが、僕と“彼女”はその流れに逆らうことなく、居酒屋を出るとすぐ隣のカラオケ店に入ることにした。



人生には三つの坂があって、その三つ目“まさか”の再会を果たすこととなった僕と“彼女”。
1年前、「生きてる限り会えるよ」と言ったのは“彼女”の方だったか。
これは恋だとかそれは恋じゃないだとか何が恋で何が恋じゃないだとか、もう僕にとってそんなことはどうでもいいのかもしれない。
“彼女”を喜ばせたくて用意したサプライズ。“彼女”は喜んでくれて僕はとても嬉しかった。そして僕は横浜に戻る。
また会えるかもしれないし、ひょっとしたらもう二度と会えないかもしれない。もし会えるのだったら会いたいと思うし、僕は会うだろう。会うべきだ、とか、会わない方がいい、とかではなくて、僕は会うだろう。そしてまた無条件の愛を“彼女”に注ぐだろう。



1年ぶりに聴く『桃ノ花ビラ』。僕はやっぱり“彼女”の歌う『桃ノ花ビラ』がいい。

“どれほど会いたいと思ったんだろう”



別れ際、“彼女”は「じゃあ、また今度」と言った。


社交辞令であっても真に受けたいなっ。

PageTop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。