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ソノ後イチエ

「いらっしゃいませ。お客様、2名様ですか?」

顔立ちの整ったイケメン店員が出迎えてくれた。

「はい」

答えたのは僕。

ここは倉敷の笹沖通りに面したとある居酒屋チェーン店。焼き鳥がうまい。


僕と“彼女”はボックス席に案内された。そしておしぼりを受けとり飲み物を注文する。車の運転がある僕はウーロン茶。“彼女”はもちろんお酒。「一度も止められたことないんだよ?」が自慢(?)の彼女だが、いくら外見を飾ったところでとてもお酒が飲める年齢には見えない。そもそも童顔なのだ。いや、それはむしろ長所なのだけれど。

「誕生日おめでとう」と乾杯。今日は4月3日。2日後の4月5日は記念すべき“彼女”の17回目の誕生日なのだ。

僕は手ぶらだった。財布に携帯、タバコ、それから車のキー。もちろんプレゼントなど“持って来ていない”。だって別に僕と“彼女”はつき合っているわけではないのだし、僕にその義務はない。ただ、会計はもちろん僕が払うつもりだ。それぐらい友達としても、年上としても当然だと思うし。


焼き鳥を数本、それからイケメン店員オススメのエビマヨサラダを食べた。“彼女”はその間、2杯ほどおかわりし、僕も「雰囲気だけでも…」と、ノンアルコールカクテルなるものをいただいた。
僕と“彼女”はお互い1年間にあった出来事を話したりした。“彼女”は学校にはあまり行かず、相変わらず夜のバイトで生計を立てていること。僕はなんとか大学には通っていて、最近髪を伸ばしていること。“彼女”が「髪長い方が似合うと思うよー」なんて言うもんで、これで僕はこの先当分短い髪にはできなくなってしまった。一方“彼女”の方も、1年前と比べるとかなり髪が伸びた。もちろんエクステは付けているらしいが、それでもやはり服装も含めて随分と大人っぽくなった印象だ(童顔だけど)。

入店してから40分ぐらい経った頃だろうか。店内の明りが突如として消えた。
たじろぐ“彼女”、と僕。

そしてケーキは運ばれて来た。ローソクの明りを灯して。

持ってきたのはもちろん先ほどからのイケメン店員、、、と言うか王本干人(おおもとほすと)君。僕の友人だ。

“彼女”は驚きの声を上げるとともにすぐに喜びの表情を浮かべた。笑うとさらに幼く見える。
そして王本君が僕に小さな花束を手渡し、僕はそれを“彼女”に渡す。

「誕生日おめでとう」と。

店員さんみんなが「おめでとうございます」と拍手をくれた。それに答えるように“彼女”がローソクの火に息を吹きかける。


大成功、だった。


昼間、鷹ちゃんとケーキ屋やら花屋を回り、“彼女”を迎えに行く前に居酒屋に寄って王本君に作戦を説明。その後、何食わぬ顔で“彼女”を連れた僕が来店する。もちろん王本君はあくまで店員として僕に接する。高い演技力を要求するドッキリだったが、王本君はじめ居酒屋の従業員みんながアカデミー賞クラスの演技をしてくれた。ありがとう、本当に。


その後の“彼女”はなんだか落ち着かない様子で、それでいてとても嬉しそうな笑顔を何度も浮かべるのだった。あまり素直に感情を表現できるタイプの子ではないのだけれど、僕が用意した思わぬサプライズに喜んでくれていることは確かなようだ。


“焼き鳥を食べた後はカラオケへ”。この極々自然な流れを“とりから”と略した友人が誰だったかは思い出せないが、僕と“彼女”はその流れに逆らうことなく、居酒屋を出るとすぐ隣のカラオケ店に入ることにした。



人生には三つの坂があって、その三つ目“まさか”の再会を果たすこととなった僕と“彼女”。
1年前、「生きてる限り会えるよ」と言ったのは“彼女”の方だったか。
これは恋だとかそれは恋じゃないだとか何が恋で何が恋じゃないだとか、もう僕にとってそんなことはどうでもいいのかもしれない。
“彼女”を喜ばせたくて用意したサプライズ。“彼女”は喜んでくれて僕はとても嬉しかった。そして僕は横浜に戻る。
また会えるかもしれないし、ひょっとしたらもう二度と会えないかもしれない。もし会えるのだったら会いたいと思うし、僕は会うだろう。会うべきだ、とか、会わない方がいい、とかではなくて、僕は会うだろう。そしてまた無条件の愛を“彼女”に注ぐだろう。



1年ぶりに聴く『桃ノ花ビラ』。僕はやっぱり“彼女”の歌う『桃ノ花ビラ』がいい。

“どれほど会いたいと思ったんだろう”



別れ際、“彼女”は「じゃあ、また今度」と言った。


社交辞令であっても真に受けたいなっ。

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