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男、ひとり花見

「いらっしゃいませ。なんで一人なんですか?」

そんな桜の声が聞こえてきそうだった。

「・・・いいだろ、別に」

斜め下を向き僕は答えた。

ここは近所にある城跡地の公園。この時期になると満開の桜を目当てに大勢の花見客が押し寄せる。そんなところへ男一人で行くなんて変質者と思われかねない。

「友達いないんですか?」

一言多いぞ、桜のクセに。

「いないわけじゃないさ。ただ、俺は自虐が好きなんだよ」

幸せそうな家族やカップルや、どこかのサークルのグループの楽しそうな声を肌に感じながら一人で散歩する。僕に足りないのは圧倒的な孤独感で、渇望なんだ。誰もいないところより、楽しそうな人達の中で一人を感じた方がよっぽど孤独になれる。

満たされたくなかった。平々凡々な満足感を、緩やかな幸せを、受け入れたくなかった。凡人に、なりたくなかった。けれど、気がつくと僕は日常の中に埋没していて、いつか感じていたような渇きも、視野の狭さからくる強烈な感情も消えてしまっていた。

これが、大人になるってことなのかなぁ。

そんなことを思いながら、僕は歩いていた。悪くないよ。悪くないさ。きっと、スーツ姿で花見の場所取りをしているサラリーマンだってそう思ってる。仲の良さそうな老夫婦も穏やかな晩年を過ごしているんだろう。小さな子供がはしゃいでいるのを愛しそうに見つめる若い夫婦だって、きっと悪くないって思ってる。皆、そういう小さな幸せを得る為にコツコツ頑張って生きてるんだ。



「なあ、なんでお前はそんな所で花を咲かせているんだ?」

僕は花見客が寄り付かない場所で一本だけポツンと立っている桜に尋ねた。

「それは、なんで生きているのかという質問と同じですね」

桜は苦笑しながら答える。ああ、そうだなと僕も苦笑した。

「じゃあ、質問を変えるよ。孤独かい?」

僕の質問に桜は花を散らす。

「寂しくないといえば嘘になりますけど、孤独じゃないですよ」

「何故?」

「地面の下では皆と繋がってますから」
 
桜の一言に僕は少し考え、なるほど、と思った。


遠くの方からハッピーバースデーの合唱が聞こえてきた。きっと誰もが根っこでは繋がっていて、その繋がりからまた新しい木が生えて、新しい繋がりが出来るんだ。

物分りのいい大人になんてなりたくねーな。

そう思いながら僕は公園を後にした。

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